〇〇病院 リハビリテーション部門

教育指針・クリニカルラダー

Clinical Ladder & Education Guideline / 制定日:____年__月__日(第1版)

1. 教育理念

「患者さんの人生に責任を持てるセラピストを、組織全体で育てる」
一人ひとりが自らのキャリアを主体的にデザインし、
学び続けることに"やりがい"を感じられる職場をつくる。

本指針は、当部門に所属する理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の卒後教育を体系化し、経験年数や個人差に左右されない標準的な成長の道筋(クリニカルラダー)を示すものである。

2. 教育の基本方針

  • ① 段階的成長の保証:入職後3年間は年次ごとのラダー目標に沿って、全員が共通の基礎的能力を確実に習得する。
  • ② 本人の希望を尊重したキャリア選択:ラダーⅠ〜Ⅲを修了した者は、本人の希望に基づき「一般職コース(臨床スペシャリスト志向)」「役職者コース(マネジメント志向)」を選択する。コースは固定ではなく、年1回の面談で変更を申し出ることができる。
  • ③ 協会生涯学習制度との連動:日本理学療法士協会の生涯学習制度(前期研修・後期研修・登録理学療法士・認定/専門理学療法士)と本ラダーを対応させ、院内教育と協会制度の二重負担を避ける。
  • ④ 評価の透明性:到達目標はすべてチェックリスト化し、自己評価と指導者評価の二段階で判定する。評価は処遇のためではなく、成長支援のために行う。
  • ⑤ 教える側も育てる:新人指導・学生指導は役職者コース(教育担当)の中核業務と位置づけ、「教育の担い手を育てる仕組み」を持つ。

3. 到達目標の3領域(日本理学療法士協会 新人教育ガイドライン準拠)

各レベルの到達目標は、協会「新人理学療法士職員研修ガイドライン」が示す3分野に沿って構成する。

領域内容
A. 基本姿勢・態度専門職・組織人としての姿勢、接遇、報告・連絡・相談、医療安全、感染対策、倫理、多職種連携
B. 専門技術情報収集、検査・測定、統合と解釈、プログラム立案、治療実施、リスク管理、記録
C. 管理的側面診療報酬・算定、物品・機器管理、スケジュール管理、業務改善、部門運営への参画

4. 教育体制

役割担当・内容
プリセプター新人1名につき1名を配置(経験3年目以上)。日々のOJT・精神的サポートを担う。
教育担当(役職者コースM1)年間教育プログラムの企画・運営、プリセプターの統括、ラダー評価の一次評価者。
主任・科長ラダー評価の最終判定、育成面談、コース選択面談の実施。
部門全体月1回の勉強会・症例検討会、抄読会の運営。全員が「教える側」を経験する文化をつくる。

キャリアパス全体図

1年目
レベルⅠ
指導のもとで安全に
基本的理学療法を実施できる
2年目
レベルⅡ
標準的な症例に対し
自立して理学療法を実施できる
3年目
レベルⅢ
応用的な症例に対応し
チームの中核として行動できる
ラダーⅠ〜Ⅲ 全項目クリア
コース選択面談(本人の希望に基づき選択・後日変更も可能)

一般職コース(臨床スペシャリスト)

臨床・研究を深め、専門性で組織と地域に貢献する
G1(4〜5年目)登録理学療法士の取得・専門分野の決定・都道府県学会発表
G2(6〜9年目)認定理学療法士の取得・院内講師・全国学会発表・実習指導
G3(10年目〜)専門理学療法士/大学院・研究指導・地域活動の中心

役職者コース(マネジメント)

教育と組織運営を担い、人と部門を育てる
M1 教育担当(4〜6年目)新人教育の企画運営・プリセプター統括・ラダー評価者
M2 主任(7年目〜)チーム管理・勤務調整・目標管理面談・他部門調整
M3 科長・技師長部門経営・人事採用・経営指標管理・事業計画
コース変更について:コースは一度選んだら固定ではありません。年1回の育成面談で変更を申し出ることができます(例:役職者コースから一般職コースへ、またその逆)。ライフイベントや興味の変化に応じて柔軟に運用します。

日本理学療法士協会 生涯学習制度との対応

年次院内ラダー協会 生涯学習制度ポイント
1〜2年目レベルⅠ・Ⅱ前期研修(座学+実地研修)実地研修は院内OJT・プリセプター制度と一体運用。座学(e-learning)の受講時間を業務内で確保する。
3〜5年目レベルⅢ〜コース1段階目後期研修領域別研修の選択は、コース選択・専門分野の決定と連動させる。
5年目(目安)G1/M1登録理学療法士 取得両コース共通の必須目標。以後5年ごとの更新も部門として支援する。
6年目〜G2〜/M2〜認定理学療法士 → 専門理学療法士一般職コースは取得を昇級要件に、役職者コースは任意(推奨)とする。
PT以外の職種(OT・ST)は、各協会の生涯教育制度(日本作業療法士協会 生涯教育制度、日本言語聴覚士協会 生涯学習プログラム)の対応する段階に読み替えて運用する。
レベルⅠ|1年目
指導・監督のもとで、安全に基本的な理学療法を実施できる
達成 0%
A:自立してできる B:概ねできる(助言下) C:指導下でできる D:経験なし・できない
A. 基本姿勢・態度
医療人としての接遇・身だしなみ・言葉遣いを実践できる
報告・連絡・相談を適切なタイミングで行える判断に迷ったら必ず相談する習慣
医療安全・感染対策の基本手順を遵守できる手指衛生・転倒予防・KYT/インシデント時は速やかに報告できる
個人情報保護・職業倫理を守った言動ができる
多職種(医師・看護師・MSW等)の役割を理解し、カンファレンスに参加できる
B. 専門技術
カルテ・画像・他部門から必要な情報を収集できる
基本的な検査・測定を指導下で実施できるバイタルサイン・ROM・MMT・感覚・形態測定・FIM/BI 等
評価結果の統合と解釈・問題点の抽出を指導下で行える
基本的な理学療法プログラムを指導下で立案・実施できる
運動療法の中止基準を理解し、リスク管理下で介入できるアンダーソン・土肥基準、血圧・SpO2・自覚症状のモニタリング
診療記録(SOAP)・報告書を期限内に正確に作成できる
基本的な介助技術・トランスファーを安全に実施できる
C. 管理的側面
診療報酬・算定単位の基本的な仕組みを説明できる
物品・訓練機器の管理(清掃・点検・返却)ができる
1日のスケジュール・単位を自己管理できる
必須課題(レベルⅠ修了要件)
  • 院内症例報告 1例以上(部門内発表)
  • 協会 前期研修(座学 e-learning)の計画的な受講
  • 月1回の新人研修への全回出席(やむを得ない欠席は補講)
レベルⅡ|2年目
標準的な症例に対し、自立して理学療法を実施できる
達成 0%
A:自立してできる B:概ねできる(助言下) C:指導下でできる D:経験なし・できない
A. 基本姿勢・態度
患者・家族へ病状に応じたわかりやすい説明ができる
カンファレンスで自分の評価・意見を簡潔に発言できる
インシデントの背景要因を分析し、再発防止策を提案できる
1年目職員の相談役として日常的なサポートができる
B. 専門技術
標準的な症例の評価から治療まで自立して実施できる
画像・血液データ等を解釈し、リスク層別化と治療に反映できる
根拠(ガイドライン・文献)に基づいた治療選択を説明できるEBPの実践:抄読会での文献紹介を含む
ADL・活動と参加を見据えた目標設定ができるFIM利得・退院後の生活像を意識した目標設定
退院支援に参画できる家屋調査・福祉用具選定・退院前カンファレンスへの参加
家族指導(介助方法・自主トレーニング)を計画・実施できる
C. 管理的側面
施設基準・加算(回復期リハ病棟・実績指数等)を理解し説明できる
担当患者全体の優先順位をつけた業務調整ができる
部門内の係・委員会活動に主体的に取り組める
必須課題(レベルⅡ修了要件)
  • 院内症例発表 1回以上(考察に文献引用を含める)
  • 抄読会の担当 1回以上
  • 協会 前期研修の修了(座学+実地研修)
レベルⅢ|3年目
応用的・複雑な症例に対応し、チームの中核として行動できる
達成 0%
A:自立してできる B:概ねできる(助言下) C:指導下でできる D:経験なし・できない
A. 基本姿勢・態度
チーム内の意見調整・合意形成の場で建設的に行動できる
新人・学生に対して意図的・計画的な指導的関わりができる
部門の課題を自分事として捉え、改善に向けて発信できる
B. 専門技術
重複障害・複雑な症例の理学療法を自立して展開できる循環器・腎機能等の併存疾患、高次脳機能障害の合併など
予後予測に基づいたゴール設定と治療計画の修正ができる
後輩の担当症例に対して臨床推論の助言ができる
臨床実習生の指導を指導者の監督下で担当できる
臨床上の疑問(CQ)を文献検索で解決し、部門内へ共有できる
C. 管理的側面
病棟リーダー等のチーム内リーダー業務を遂行できる
業務改善を企画・提案し、実行まで関与できる例:申し送り方法の見直し、書式改訂、動線改善など
部門の経営指標(単位数・実績指数等)を理解し、行動に反映できる
必須課題(レベルⅢ修了要件)
  • 学会発表 1回以上(都道府県士会レベル以上)または 院外研修の受講+伝達講習
  • 臨床実習生または新人の指導補助の経験
  • 協会 後期研修の受講開始
レベルⅢ修了=コース選択面談へ:Ⅰ〜Ⅲの全項目B以上+必須課題完了を確認後、科長・主任との面談で「一般職コース」「役職者コース」を本人の希望に基づいて選択します。迷う場合は選択を保留し、翌年度の面談で決定することもできます。

一般職コース(臨床スペシャリスト志向)

臨床・研究を深め、専門性によって患者・部門・地域に貢献するコース。役職には就かず、認定・専門理学療法士等の資格取得と教育貢献(講師・実習指導)を軸に成長する。

G14〜5年目|専門性の基礎固め
  • 登録理学療法士の取得(5年目目安・必須)
  • 自分の専門分野(脳卒中・運動器・循環器など)を決定し、領域別研修を計画的に受講
  • 都道府県士会学会での発表 1回以上
  • 院内勉強会の講師 1回以上
G26〜9年目|認定領域の確立
  • 認定理学療法士の取得(昇級要件)
  • 全国学会での発表、または筆頭論文の執筆に挑戦
  • 臨床実習指導者講習会を修了し、実習指導者(CE)として学生指導を担当
  • 部門内の専門領域リーダーとして、後輩の臨床相談に応じる
G310年目〜|部門を代表する専門家
  • 専門理学療法士の取得または大学院進学(推奨)
  • 部門の研究活動の指導・査読的役割
  • 地域活動(地域ケア会議・住民向け講座・職能団体活動)の中心を担う
  • 認定スペシャリストとして給与・処遇へ反映(施設の規程による)

役職者コース(マネジメント志向)

教育と組織運営を担い、「人と部門を育てる」コース。入口は教育担当(M1)とし、教育経験を通してマネジメントの基礎を身につけてから管理職へ進む。

M1 教育担当4〜6年目|教育を通じてマネジメントを学ぶ
  • 年間新人教育プログラムの企画・運営(研修カリキュラム作成・講師調整)
  • プリセプターの統括:プリセプター向けの指導方法研修・月1回の情報交換会の運営
  • ラダー評価の一次評価者:チェックリスト評価・育成面談の陪席
  • 臨床実習指導者講習会を修了し、実習受け入れの窓口を担当
  • メンタルサポート:新人の状態把握と早期のフォロー(休職・離職予防)
  • 登録理学療法士の取得(5年目目安・必須)
M2 主任7年目〜|チームマネジメント
  • チーム(病棟・部署単位)の業務管理:勤務調整・担当割り当て・業務量の平準化
  • 目標管理面談(部下の目標設定・中間・期末面談)の実施
  • 他部門(看護部・医事課・地域連携室)との調整窓口
  • インシデント・苦情への一次対応と再発防止策の運用
  • 管理者向け研修(士会・協会主催のマネジメント研修等)の受講
M3 科長・技師長部門経営
  • 部門の事業計画・予算の立案、経営指標(単位数・実績指数・稼働率)の管理
  • 人事:採用・配置・評価・処遇の決定への参画
  • 施設基準の維持・診療報酬改定への対応方針の決定
  • 病院運営会議への参加、部門を代表した院内外への発信
役職者コースでも臨床は続けます:M1〜M2 は臨床業務と兼務し、患者担当を持ちながら教育・管理業務の比率を段階的に増やします。認定理学療法士等の取得も引き続き推奨します(必須ではない)。

評価方法

項目内容
評価基準(4段階)A:自立してできる / B:概ねできる(助言があればできる) / C:指導下でできる / D:経験なし・できない
評価の流れ① 本人が自己評価 → ② プリセプター・教育担当が評価 → ③ 育成面談で擦り合わせ・次期目標の設定
昇級判定当該レベルの全項目B以上必須課題の完了 をもって修了。判定は教育担当の一次評価を経て主任・科長が行う。
未達の場合年度をまたいだ継続を可とする(未達=マイナス評価ではない)。到達を妨げている要因を面談で特定し、支援計画を立てる。

年間スケジュール

時期内容備考
4月目標設定面談本年度のラダー目標・研修計画・学会/資格の予定を確認
10月中間評価・面談チェックリスト中間評価。遅れがある場合は支援策を検討
3月期末評価・昇級判定年間の到達確認・次年度目標の仮設定
3月(3年目のみ)コース選択面談ラダーⅠ〜Ⅲ修了者は希望コースを選択(保留も可)
随時コース変更の申し出年1回の面談で変更可能

本ページの使い方

  • 各レベルのチェックリストは A〜Dボタンをタップして自己評価できます。評価はこの端末(ブラウザ)に自動保存されます。
  • 進捗バーは「B以上」の項目の割合を表示します。
  • 面談時は右上の「🖨 全ページ印刷」からA4で印刷し、紙面でも共有できます(評価状態も印刷されます)。
  • 複数人で使う場合は、個人ごとにファイルをコピーするか、印刷版を評価原本としてください。

参考資料

  • 日本理学療法士協会「新人理学療法士職員研修ガイドライン」/生涯学習制度(前期・後期研修、登録・認定・専門理学療法士)
  • 上尾中央医科グループ(AMG)リハビリテーション部門の教育制度(段階的個別能力開発クラス1〜3、マネジメントラダー)
  • 本指針は年1回(3月)に教育担当・役職者で見直しを行い、改訂履歴を残す。